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Bitcoinが死ぬ時 スペースコイナーとサトシの逆襲

Bitcoinは、ここ数ヶ月で二倍以上の値上げを誇っており、バブルではないかという声は多く上がっている。Bitcoinは価値なく思惑で値上がりしているのだろうか。ブロックチェーンは役立たずで、所詮デジタル上で価値を保証するなんて無理だったんだ、やっぱやーめた、とする時がくるのだろうか。

Bitcoinの弁慶の泣き所

もちろん、完全無欠なものは存在し得ないように、Bitcoinにも脆弱性がある。麗しきBitcoinerなら知っての通り、51%攻撃だ。具体的な説明はめんどうだから、このあたりを見ていただきたい。
51%攻撃とは

かんたんにいうと、ブロックチェーンの性質上、ある共通認識のもとでBitcoinの維持に費やされているCPUパワーが全体の内、51%を超えてしまうと、Bitcoinのブロックチェーンを乗っ取ることができてしまう、というものだ。

​共闘の果てに:スペースインベスターの最期

実はちょっとだけ似たようなことは株式において起こったりしていた。とはいっても株式自体の消滅というわけではないし、ここで取り上げるのは、Bitcoin51%問題において起きる共闘感の近似例としてだ。かれらが戦ったのは、一概に悪意ともいえない、″まと″だった。このことは橘玲 氏の『臆病者の株式入門』に紹介されている。

”まと”とされたのは、年金基金の運用者などが保有する鈍重な銘柄だった。年金運用者は、国民の資産を預かっているから、成績の悪くリターンを生まない負債的な株式は、ある決められた株価以下になった場合、機械的に売ることが義務付けられていた。個人投資家たちはここに目をつけた。

かれらは、身重なスター・デストロイヤーに対して、最新鋭の通信機器と高速な回線を装備して立ち向かう反乱同盟軍だった。かれらは、標的にした株式に対して、空売りというビームガンでスター・デストロイヤーの装甲にダメージを与えていったのだ。かれらの目的は、信用取引による空売りの砲撃で巨大船を撃沈させ、お宝を奪い取ることだった。

ひとつひとつのダメージはわずかだったが、団結して攻撃を仕掛ければ値は動いた。スペースシップのパイロットたちは、互いに無線で連絡を取り合い、攻撃を続けていった。

そうして、ついに!年金運用者は、目標株価以下にまで落ちた株式に耐えきれずポートフォリオから切り離しを行ったのだ。株価は崩れ落ち、陥落した。反乱同盟軍の有志たちは、歓喜をあげお互いを称えあった。宇宙は救われたのだ。めでたしめでたし。

と、いかないのがゼロサムゲームのつらいところだ。喜びと自信にあふれた反乱同盟軍は、いくつかの株式にも同じような作戦で成功をおさめたが、そんなかれらについて粛々と分析を重ねていた証券会社系のトレーダーたちが、ある日制裁を加えるべく立ち上がったのだ。かれらは、個人投資家たちの攻撃を受けていた株式の陥落目標株価寸前というところで、資金力を活かして一気に買い上がるという動きに出たのだ。無論、陥落寸前のところで逆襲にあった反乱同盟軍の有志たちがどうやったかは言うまでもない…。

ビットコイナーズ・ウォー:つなげわたしたちの信頼性

これをBitcoinにあてはめるとどうなるだろうか。最初はなんだか薄暗くて巨大なディスプレイのある会議室だ。そこでは、ローブをまとって、顔は影に隠れた老人たちがBitcoinをつぶす計画を練っている。どうやら利害関係的に、かれらにとってBitcoinは邪魔らしい。P2Pとかよく分かんないし、支配下にも置けないらしいからなんだかヤなやつ。

そうしたわけで会議は着々と終盤へと向かい、ひと段落ついたところに、ある一人の男が招かれる。かれは、つかつかと中央へ赴き、頭をさげる。かれは元優秀な技術者だったが、ある日を境に暗黒面に堕ちたのだ。老人の一人が、かれに指図を与えるとかれは、うやうやしくゆっくりと頭をさげる。

ここで場面は主人公の場面に移る。かれは、レンチやらスパナやらを手にして自慢の宇宙船の整備に勤しんでいる、町ではちょっと変わり者の青年だ。そこへ陽気なダイナーの店主がくしゃくしゃになったコインテレグラフ日本語版をお届けする。どうやら51作戦が始まったというのだ。主人公は、ついに来たかと愛機に飛び乗る。行き先は惑星2100。移動のさなかに思い出す、かつて共に戦った反乱同盟軍。主人公は10何年ぶりにかれらに連絡をとり、あのときは空売りでえらい目にあったな、などと雑談ののち、51作戦への対抗の決意を確かめ合う。

状況として違うのは、かつての最新鋭の通信機器や高速回線は、いまや世界中の一般国民に普及している点だ。Bitcoinはアメリカ・中国・日本をはじめ、世界中に広がっている。インド人はBitcoinを当たり前に買ってるし、マサイ族はスマホを持っている。

反乱同盟軍が依然トップを走るのは変わりないが、全世界のBitcoin擁護派の人たちがリアルタイムで情報を共有できるし、先進国の国民などは、ステッカーをやたらに貼ったMacBookとかBTOゲーミングPCとかで実際に参戦できる。もしかしたら正義のBitcoiner技術者がスマホでもなんらかの力になれるようなアプリを開発するかもしれない。

勝負はブロックチェーンをいかに長くつなげるかだ。対抗するのは、暗黒面のかれの元に集ったBitcoin撲滅派集団である。かれらは多分、会議室の老人たちのバックアップを受けていたりするから資金力的に強大だ。

ただし正義のBitcoiner軍も前述のとおり負けてはいないはずだ。力は拮抗するかもしれない。ただし正義は勝つのだ。世界中の力を合わせてブロックチェーンという手をつなぎ合わせ、暗黒面をマグマの中へ葬り去る。悪はいなくなり、世界に平和が戻る。世界中の人たちは、安堵のため息をつき、心底助かったような気持ちになる。なんせBitcoinは純金より高いから、なくなっちゃ困る。

一種の高揚感と少しの本音が出たところで、Bitcoinのブロックチェーンは存続することになる。反乱同盟軍と世界中のBitcoinerが歓喜をあげ、お互いを称えあった。地球は救われたのだ。めでたしめでたし。

 

…それでいいのだろうか。なんだかいやな予感がする。

な、なんだあいつは!世界中がぎゃーぎゃー言っているときに、メディアにうら若い男が登場する。ニュースキャスターは男についてこう伝える。

サトシ・ナカモト。

「Bitcoinは失敗でした。法定通貨に戻します。」

 

…ぎゃー!!

 

そうして一度は救われたかと思われたBitcoinは、生みの親であるサトシ・ナカモトによって終焉を告げられたのであった。なんてドラマチックな。

ビットコインの行く末:現実的な予想

Bitcoinがなくなることは世界中の多くの人たちが望んでいないことは確かです。そしてBitcoinがなくなってしまうことは2009年、2010年あたりではありえたかもしれませんが、2009年から今までゼロダウンタイムで稼働してきた優れた非中央集権システムは、他のどの暗号通貨よりも強固なブロックチェーンを築き上げ、人々の信頼を得ています。その信頼性により世界中で暗号通貨経済の基軸通貨として使用されているのはどの取引所にいっても見られる光景です。

Bitcoinの基盤的技術ブロックチェーンは社会の変化せさる力を秘めたIT界のホープです。ブロックチェーンは2015年、2016年ごろから、急速に世界各国のメガバンクあるいは世界的大企業から注目を集め、運用実験が今まさに行われています。加えてカナダ政府は暗号通貨・ブロックチェーン先進国としてすでにそちらへ舵を切っているし、日本も2017年4月に仮想通貨法を制定したりと整備を進めています。識者の予測によると近いうちに、それぞれの企業がそれぞれのブロックチェーンを自社に持ち運用していく時代がくるともしています。

こうしたブロックチェーン社会において、資産の預け場所として最も信頼できるブロックチェーンを持つ暗号通貨が選ばれるのはとても合理的です。これがただのP2Pネットワークを利用した電子キャッシュだったならば、新しい機能をたくさん盛り込んだ流行りの通貨にどんどん鞍替えしていけばいいでしょう。しかし、Bitcoinはピアツーピアで分散化されたブロックチェーンによって信頼性を保守している暗号通貨だということを忘れてはなりません。これは信頼性の革新であることを、再認識する必要があるでしょう。

統計学的な算出では、Bitcoinの未来価格は50万ドルとも500万ドルとも言われています。これがバブルというのであっても、仮に下落した場合、それは二次的な、大局的に見た場合の″調整″である、というのが現実的判断ではないでしょうか。

もちろんBitcoinがドラマチックな結末を迎えることも、リスク認識の一つとして、持っておく必要があるのは、言うまでもありません。

 

この記事を書いた人

伊澄 理夢

伊澄 理夢 / イズミ リム / IZUMI Rhime
2017年3月からブロックチェーンに興味を持って以来、デザインの面から、"NEM"を通じて技術の普及に貢献できる道を探しています。
児童文学と純文学、哲学と現代思想、仏教と禅、黒い服と民族衣装が好きなINTROVERT(内向型)です。
大学ではデザインを学ぶ。